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猫町 他17編(岩波文庫) 萩原朔太郎
¥420
良好(非常に良い/良好/並) 26版 2022/7/25 発行 「私」は東京から北越の温泉に向かう途中、偶然「繁華で美しい町」に足を踏み入れます。 そこで出会ったのは、人間の姿をした猫たちの大群。 この『猫町』は、詩集『青猫』の感覚を引き継ぎ、幻想的な短編や散文詩、随筆を十八篇収めています。 詩人としての朔太郎の独特な視点と詩情が際立っており、魅力的な小品集となっています。
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蒲団・重右衛門の最後(新潮文庫) 田山花袋
¥450
非常に良い(非常に良い/良好/並) 89版 2022/10/30 発行 田山花袋(たやま かたい)は、1872年に栃木県(現在の群馬県)で生まれ、1930年に亡くなりました。彼の作風は人間の内面や社会の現実を赤裸々に描くことで知られています。 代表作には『蒲団』や『田舎教師』があります。 特に『蒲団』は、中年男性の若い女性への複雑な思いを描き、当時の文壇に衝撃を与えたのです。 ほかにも紀行文や詩、記録文学なども手がけ、当時の交通事情や風俗を伝える貴重な記録となっているそうです。 『重右衛門の最後』を併録。
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小銭をかぞえる(文春文庫) 西村賢太
¥50
SOLD OUT
非常に良い(非常に良い/良好/並) 4版 2011/6/5 発行 金欠で妄想に悩む主人公は、愛憎や暴力に翻弄される最底辺の男です。彼の壮絶な日々は悲惨さを超えて笑いを誘うほど。 西村賢太さんの傑作私小説2篇は、暴言を吐きながらも優しさを見せる一面が描かれています。中卒の彼は、年下の大卒の女性と同棲しており、日常の何気ないシーンがとてもユーモラスに表現されています。自宅やデパートに行く会話のやり取りが秀逸なのでクスッと笑える場面もあります。 ちなみに、私は、西村賢太さんの作品はどれも不思議と一気読みできてしまいます。 私小説であり、西村賢太さん自身が文学に詳しいため、作品中に登場する作家や作品の情報から文学の知識も得られるのが良いところであり、私にとっての西村賢太の楽しみ方の一つです。
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ちくま日本文学全集 織田作之助 1913-1947(筑摩書房) 織田作之助
¥800
良好(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1993/5/20 発行 織田作之助得意の短編集です。織田作は短編の名手なので本当に面白い。 本書にはもちろん、代表作『夫婦善哉』や『勧善懲悪』『アドバルーン』など名作が入っているので、楽しめます。 織田作を満喫してくださいね!
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〖新装版〗父の詫び状(文春文庫) 向田邦子
¥450
良好(非常に良い/良好/並) 44版 2022/10/5 発行 傑作エッセイです。心に残る部分は、頑固で愛情を口に出せないお父さんの話が印象的です。例えば、子どものために庭に池を作ろうとしたのに、けがをしてしまい、すぐに埋めてしまうという少し不器用なところが、昭和の雰囲気を感じさせます。 近所の人や親戚に囲まれて、のびのびと育った向田邦子さんの感性が、このエッセイからも伝わってきて、読むと心が穏やかになります。 また、巻末の解説を沢木耕太郎さんが書いていて、これがとても面白く、解説だけでも楽しめる内容です。 向田邦子さんに興味のある方は読んでみると楽しめます!
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眠れるラプンツェル(幻冬舎文庫) 山本文緒
¥400
良好(非常に良い/良好/並) 8版 2000/6/5 発行 この作品は、女性の孤独をいろんな角度から描いていますが、特に主人公の孤独感がすごく強いです。 物語は、既婚で夫とは信頼関係のない28歳の主婦が、15歳年下の中学1年生に恋をするという内容です。 28歳で「おばさん」とされている点に違和感がありましたが、20年前の作品なので、そこは仕方ないだろうと思います。また、今なら児童虐待と批判されそうな部分もあります。 けれど、最後にはほろ苦さと甘さが残る印象的な作品だと感じました。 マンションの部屋を塔と見立てて、書かれているところは誰もが感じる閉塞感や安心感を醸し出しています。きっと誰もが感じることかな?と思いました。
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ちくま日本文学 三島由紀夫 1925-1970(筑摩書房) 三島由紀夫
¥1,000
非常に良い(非常に良い/良好/並) 2版 2015/6/5 発行 この本のあとがきを書かれた、森毅さんは「三島由紀夫の長い作品は、一冊に収めるのが難しく、代表作も出版社との契約で使えなかった」と説明しています。そのため、収録されたのは短編や戯曲、エッセイが中心で、普段あまり読めないものも入っています。たとえば、「海と夕焼」を除けば、新潮文庫では読めないものが多く含まれています。 三島由紀夫の魅力は、代表作だけでなく、他の作品も楽しめるところです。たとえば、学生運動を背景にした戯曲「喜びの琴」や、短編「中世」があります。 「中世」は三島が20歳のときに書いた美しい作品で、まるで蒔絵細工のように華やかな文体が特徴。 他の作品も面白くて、満足できると思います。 三島由紀夫の代表作以外の作品に興味がある方はぜひ、読んででみてくださいね。
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美しい心臓(新潮文庫) 小手毬るい
¥50
SOLD OUT
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫2016/2/1発行 DVから逃れた私は、偶然出会った既婚者の彼との秘密の関係に救われました。彼との密会で感じた甘い感情は、私を新しい場所へと導きます。しかし、最終的に私が望んだのは、彼の死でした。 この物語は、禁断の恋を描いた不倫小説です。 恋に溺れる女性は、時に恐ろしいほど複雑ですが、その姿には可愛らしさもあり、多くの人が共感できるものだと思います。
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木曜日にはココアを(宝島社文庫) 青山美智子
¥500
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪20版≫ 2023/1/3発行 私たちは気づかないうちに、誰かを助けていることがあります。散歩をしたり、卵焼きを作ったり、ココアを注文したりする日常の出来事がつながって、誰かの命を救うこともあります。この本は、小さなカフェ「マーブル・カフェ」での12の物語が描かれており、読むと心が温かくなります。特に幼稚園の先生の話は感動的で、どの話も希望に満ちた結末が待っています。何度も読み返したくなる優しい作品です。
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余命一年、男をかう(講談社文庫) 吉川トリコ
¥450
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2024/5/15発行 片倉唯は40歳、節約が趣味の独身女性です。ある日、無料のがん検診を受けたところ、進行した子宮がんと宣告されます。手術を勧められますが、唯は「これでやっと死ねる」と少しほっとします。そんな時、病院のロビーでピンク髪の若い男性が現れ、「お金持ってない?」と声をかけてきました。この出会いをきっかけに、唯と彼の奇妙な関係が始まり、彼女の人生が少しずつ変わっていく物語です。サクサクとした文章や、登場人物の会話に感情移入しやすいので、すぐに読めてしまいます。 第28回島清恋愛文学賞受賞作
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『赤×ピンク』(角川文庫)/桜庭一樹 『Love Songs』(幻冬舎文庫)/唯川恵他
¥450
【並】(非常に良い/良好/並) 2冊セットです ◆『赤×ピンク』(角川文庫)/桜庭一樹 ≪初版≫ 2008/2/25発行 深夜の六本木の廃校で、少女たちが毎晩非合法のファイトを行っています。彼女たちは悩みを抱えつつも、格闘技を通じて答えを見つけようとしています。この物語は、壊れたけれど純粋な少女たちのサバイバルと愛を描いており、自分について悩む女性にとって参考になる本です。 ◆『Love Songs』(幻冬舎文庫)/唯川恵・山本文緒・角田光代・桜井亜美・横森理香・狗飼恭子・江國香織・小池真理子 18版 2005/1/25発行 この本は、8人の作家による恋愛短編集です。特に小池真理子の「STORM」は読みやすく、情景が鮮明で感情移入しやすいです。主人公が過去を振り返っても仕方ないと感じるセリフに心を打たれます。この本には女性作家の作品が集まっており、それぞれの個性がよく表れています。私のお気に入りは狗飼恭子の「やさしい気持ち」で、好きな人への想いに共感できました。
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嘘(ポプラ社) 宮沢賢治、与謝野晶子、エロシェンコ
¥800
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪3版≫2012/3/24発行 ソフトカバー 心からこぼれ落ちる その言葉は本物ですか 村の落ちこぼれ少年・斉藤平太は、父の威信で職に就いたものの、間抜けな失敗ばかり。皆の嘲笑に嫌気がさして心機一転上京するが…(宮沢賢治『革トランク』)。級友の作り話遊びに退屈した「私」は、「今迄隠して居ましたけれど」と自らの秘密を語りはじめた(与謝野晶子『嘘』)。「わたしたちは色が白いから、いちばん文明が進んでいるのですか?」――盲目の少年の問いに、大人たちは狼狽する(エロシェンコ『ある孤独な魂』)。曇りなき心で綴られた名篇が、鏡となって虚構を映し出す。(ポプラ社より)
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早期始発の殺風景(集英社文庫) 青崎有吾
¥480
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2022/1/25 発行 6篇からなる短篇集 始発電車に乗ると同じクラスの女の子が居た。普段はほとんど話をしない彼女との不思議な電車と言う空間。なぜ、早起きして始発に乗るのか?ということを少しずつ話をしてゆきます。ちなみに始業時間まで三時間あるという時間枠の中での出来事です。 昨年WOWOWでドラマ化されています。 表題作のそのほか、 ・メロンソダ・ファクトリー ・夢の国には観覧車がない ・捨て猫と兄妹喧嘩 ・三月四日、午後二時半の密室 ・エピローグ
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【再入荷】大人のための残酷童話(新潮文庫) 倉橋由美子
¥350
【並】(非常に良い/良好/並) 7版 1999/3/25発行 経年によるヤケあり 読むには全く問題ありません 世界中の名作童話を縦横無尽にアレンジしており、物語の背後に潜む人間の邪悪な意思や淫猥な欲望を露骨に焙り出しています。 童話の最後に【教訓】が書かれています。 例えば、最初の「人魚の涙」だと、 「教訓:人は下半身には恋しないものです」 子供では理解できない毒が混じっています。 挿絵と教訓が残酷さを語っている大人のグリム童話になっています。 ぜひ、一読ください。 『目次』 人魚の涙 一寸法師の恋 白雪姫 世界の果ての泉 血で染めたドレス 鏡を見た王女 子供たちが豚殺しを真似した話 虫になったザムザの話 名人伝補遺 盧生の夢 養老の滝 新浦島 猿蟹戦争 かぐや姫 三つの指輪 ゴルゴーンの首 故郷 パンドーラーの壺 ある恋の物語 鬼女の島 天国へ行った男の子 安達ケ原の鬼 異説かちかち山 飯食わぬ女異聞 魔法の豆の木 人は何によって生きるのか 童話の最後に【教訓】が書かれている。 例えば、最初の「人魚の涙」だと、 「教訓:人は下半身には恋しないものです」 挿絵と教訓が残酷さを語っているグリム童話です!
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夫婦善哉 (決定版)(新潮文庫) 織田作之助
¥420
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2016/9/1 発行 『夫婦善哉』(めおとぜんざい)は、織田作之助の短編小説。 織田作之助が描いた『夫婦善哉』は、昭和の大阪を舞台に、柳吉と蝶子というちょっと不器用な夫婦の物語が繰り広げられます。彼らの愛は甘くて切なく、時には苦いけれど、どこか憎めない。結婚生活って、思い描いていたものと違う瞬間もありますよね?でも、この本を読めば、「こんな風に感じるのは私だけじゃないんだ」と、少し心が軽くなるかもしれません。 本書は夫婦や恋愛に悩む時、自分自身を見つめ直すきっかけになるかもしれません。「どうしてわかり合えないんだろう」と感じる瞬間、柳吉と蝶子のように、違いを抱えながらも互いに歩み寄ろうとする姿を見て、ふと考えさせられることがあるはずです。大阪弁で描かれるユーモアも、ちょっと疲れた心に笑いを届けてくれます。 もし、あなたが今、夫婦の関係や恋愛に悩んでいるなら、この物語を通じて新しい視点を見つけることができるかもしれませんよ。 本書は「続・夫婦善哉」も収録しています。 ***『夫婦善哉』については、10/3公開のショップブログにて掲載!
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欲しいのは、あなただけ(新潮文庫) 小手鞠るい
¥50
SOLD OUT
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2007/3/1 発行 島清恋愛文学賞受賞作品 主人公・かもめが好きになった対照的な二人の男性が出てきます。 19歳の女子大生かもめが好きになったのは「男らしい人」だった。 酷い言葉を投げつけられ、酷い扱いを受け、恥辱にまみれた交際が続いた果てに、男らしい人はかもめが望んでいるであろう”結婚”を決断する。 しかし、かもめが本当に欲しいものは結婚ではない。 (以下、本文より) 「責任とか、結婚とか、家庭とか。わたしが欲しいのはそんな、得体の知れないものではないのだ。わたしが欲しいのは、あなただ。あなたとの生活でもなく、あなたの子どもでもなく、あなた自身。あなたの欲望。その愛人で、わたしはあり続けたいだけ。 あなたの一部でありたい。同時に、全部でありたい。あなたの座っている車の座席、握っているハンドル、吸い込んでいる空気、吐き捨てるタバコの煙でも構わない。あなたの触るすべてのものに、わたしはなりたい。たとえばあなたの血管を、私の血液になって、流れたい。あなたに溶けて、重なっていたい。それがわたしにとって、愛すると言う事。 あなたが躰で、わたしが心。あなたが海なら、わたしは潮騒。あなたが空なら、わたしは夕焼け。あなたが問いで、わたしが答え。愛することしかできない。それがわたしの答えなのだ。 どうしてそれが、あなたにはわからない?」 ***** 激しすぎるくらい、激しいと思う。まるで「男らしい人」を責めるよう。 それでも「男らしい人」はかもめの言った意味がわからない。 かもめはわかってもらえないと判断した結果、崖から身を投げる。 (後半) 死に損なったかもめは、数年かけて大学を卒業する。 その後、就職した先で恋をします。 こんどは「優しい人」だった。「優しい人」は結婚していた。 つまり不倫。 「優しい人」だからと言って、「男らしい人」に対してあったような、かもめの感情の激しさがないわけではない。 かもめは「優しい人」に対しては、静かな、地の果てを這うような激しさを持っていた。 この作品の中に繰り広げられているのは、青春の日に費やした女性特有のヒリヒリするような痛みを伴う愛の記憶です。 「かもめ」や「男らしい人」や「優しい人」がそれぞれ抱えている孤独を共感できたから、納得して本を閉じました。 人それぞれだと思いますが、なにかしら湧き出る感情があると思います。
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珍品堂主人(中公文庫) 井伏鱒二
¥50
SOLD OUT
【並】(非常に良い/良好/並) ≪4版≫ 1986/7/15 発行 天に経年のヤケ。小口に薄いシミあり。 骨董大好きな人の話です。 「ちゃんとした学校の先生」くずれで、趣味がいつの間にか本職になってしまった骨董狂、加納夏曆57歳。 この、通称 ”珍品堂”という主人公が骨董の売買に行き詰まっ て料理屋を始めます。 塗物は石川県、焼物は岐阜県、味噌はどこ、蕎麦粉はどこと凝りに凝った甲斐あって、料亭「途上園」は繁昌するが、金主の紹介で顧問格に迎えた蘭々女という茶の師匠に弱みを握られて、ついにはいびり出されてしまう。そして、再び骨董の道に舞い戻る、という内容です。 それだけのお話なのです。 が、しかし、 描かれる人物みな一癖あってとても面白いのです。個人的に夏目漱石の『坊っちゃん』を思い出しました。ユーモアたっぷりでゆっくり読めます。
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そういうふうにできている(新潮文庫) さくらももこ
¥400
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1999/7/1 発行 経年劣化 天、小口ヤケあり(写真の通りです) 読むには問題ありません。 さくらももこさんの妊娠出産の出来事を中心にしたエッセイ。 夫から妊娠のことを積極的に考えるようにと、書籍をどっさり渡されるももこさん。 「興味のない本を無理に読むと言うのは「学習」である。」という一文に共感しました。 しかし、やり過ごしているうちに問題に直面したとき、やはり「学習」せねばならないことになります。 「この腹の中に何かがいるのである。大便以外の何かがいる!!」 ももこさんが妊娠を発覚したときの衝撃をこのように話しています。 妊娠、出産期の痛みや心身の不調に直面しても、どこか冷静に現状を見ている感じがします。前向きに面白く捉え直せる精神が素晴らしくて、見習いたい部分でもありました。 経験したことがなく掴みどころのない妊娠・出産について、表現し難い機微を独特の視点でリアルに表現されていて、読んでいる私まで妊娠と出産をした気分になった。 妊娠出産した人もそうでない人も関係なく、楽しく笑えるエッセイでした。 心を明るくしたい人には面白いエッセイです。 読みやすいですし、ね!
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友情(岩波文庫) 武者小路実篤
¥400
【良好】(非常に良い/良好/並) 12版 2015/7/15 発行 武者小路実篤の恋愛と友情の王道青春小説です。 脚本家・野島(売れていない)と、作家・大宮(売れている)は、各々が尊敬し合う友人。野島は美しい友人の妹・杉子に恋をします。 そこから始まる恋愛と友情の板挟みにおける「切なさ」「苦しさ」「幸せ」「もどかしさ」すべての感情がたくさん出てきます。 恋する気持ちと友情の在り方を改めて学んだように思えます。 三人のそれぞれの『気持ち』が交差して、決心を生みます。恋と友情に悩んでいる方にオススメします。 夏目漱石の『こころ』を読んだことのある人なら、違いが面白いと思いました。
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夜の光に追われて(講談社文庫) 津島佑子
¥750
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1989/9/10 発行 経年のヤケあります。 読むには全く問題ありません。 1986年第38回読売文学賞受賞作品 津島佑子:1947年東京都三鷹で父・津島修二(筆名:太宰治)、母・美知子の次女(里子)として生まれました。(2016年没) 彼女の父・太宰治は佑子が生まれた翌年に玉川上水で入水心中しました。 ***** 私小説、自叙伝ともいえる本書。 作者自身とも思われる小説家の主人公が、平安時代に書かれた『夜の寝覚』の物語を改めて書き直すことによって、物語のヒロイン珠子の悲しみに寄り添おうと試みる。 主人公が亡き息子の遺灰の一部を子の父親である男の元へ届けにいくストーリーと、「夜の寝覚」のヒロイン珠子の物語が交互に語られており、より悲しみを共感できる構造になっています。
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すべて真夜中の恋人たち(講談社文庫) 川上未映子
¥430
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2014/10/15 発行 「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。 それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。」本文より 冬子(フユコ)34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに生きていた彼女は、ある日カルチャーセンターで58歳の男性、三束(ミツツカ)さんと出会う。 誰がどんな恋愛をしようと勝手ではないか。そんなことばが出てきました。心の中を繊細に描いている。さすが川上未映子さんだと思う!
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旅のラゴス 改版(新潮文庫) 筒井康隆
¥430
【良好】(非常に良い/良好/並) 31版 2015/10/31 発行 SF初心者の人なら、ファンタジー色が強い作品から読んでみるのをおすすめします。 初めて読んだ瞬間「宝物にする」と決めたのが『旅のラゴス』です。表紙だけ見ると古代遊牧民の作品かと思うのですが、どこか未来色も感じる不思議な世界が舞台。 集団で別の場所に転移することができる民族や、壁を通り抜けられる男など、人々はさまざまな能力を持っています。 そんな中、愛馬スカシウマとともにただひたすら旅を続ける男ラゴスの物語。かなり好きな作品なので一言で感想がスラスラ出てこなくて申し訳ないです。懐かしさと郷愁を感じさせる傑作SF小説です。
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潤一(新潮文庫) 井上荒野
¥350
【良好】(非常に良い/良好/並) 3版 2018/6/10 発行 井上荒野による恋愛小説の連作短編集 第11回島清恋愛文学賞受賞作 26歳の青年・潤一と14歳から62歳まで9人の女性との刹那の愛を描いています。 まるで自分が9人の女性となり、いろんな側面の潤一と関わった気分になります。 もしかしたら、人生で、潤一のような人と一瞬でもかかわったんじゃないだろうか? そんなふうに思えました。 テレビドラマ化されています。潤一は志尊淳さん。
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小説読本(中央公論文庫) 三島由紀夫
¥600
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2016/10/25 発行 「小説家はなりたくてなれるものではない―」という出だしで始まります。 小説の原理を追究した長篇評論「小説とは何か」を中心に、「私の小説の方法」「わが創作方法」など、自ら実践する作り方を大胆に披瀝し編を収めている。 作家を志す人々に贈る、三島由紀夫による小説指南の書。説得力のある内容でした。 目次 作家を志す人々の為に 1(小説とは何か) 2(私の小説の方法;わが創作方法;小説の技巧について;法律と文学;私の小説作法;法学士と小説;法律と餅焼き) 3(私の文学;自己改造の試み;「われら」からの遁走)