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敵(新潮社) 筒井康隆
¥1,100
良好(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1998/1/30 発行 函あり ハードカバー 筒井康隆といえば『旅のラゴス』の印象があり、幻想的で哀愁のただようものというイメージがありました。しかし、やはり、このひとはすごいです。 本書のラストは圧巻でした。紙の本ならではの見ごたえがあります。 さて、『敵』ですが、主人公は75歳の渡辺儀助。彼は大学教授を辞めて10年になります。 愛する妻を失い、一人静かに暮らす日々を送っています。料理や晩酌を楽しみ、時には酒場にも出かける彼ですが、年下の友人とは疎遠になり、かつての教え子・鷹司靖子が訪れることはありません。 そんな彼のもとに、病が忍び寄りますが、春にはまた皆に会えるかもしれないと希望を抱きつつ生活するんです。 この作品は、儀助の私生活や夢、妄想を豊かに描写し、時には愉快さも交えながら進行します。「神」をテーマにした展開も見事だと感じましたし、読み進めるうちにその文章力に感服します。 ラストの表現は、紙の本ならではの特別なものとなっています。
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疼くひと(中央公論新社) 松井久子
¥550
非常に良い(非常に良い/良好/並) 7版 2021/9/10 発行 この恋愛小説は知恵や経験が絡む切ない恋の物語。 脚本家の唐沢燿子は古稀を迎え、老いを感じ始めていますが、SNSで出会った年下の男性との交流が彼女の生活を一変させます。彼の言葉に心を揺さぶられ、次第に彼にのめり込んでいく燿子。人生の後半に始まる大人の恋の行方はどうなるのでしょうか?心理描写が深く、少しくどく感じる場面もありますが、意外な展開が待っています。
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ゲルマニウムの夜(文藝春秋) 花村萬月
¥800
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1998/9/20 発行 天、小口にシミ、ヤケあり。シミが気にならない方なら大丈夫です。読むには問題ありません。クリーニング済 この物語は、殺人を犯した青年・朧(ろう)が、自分が育った修道院兼教護院に戻って身を隠す話です。 彼は修道院でも暴力的な行為や性的な行動を繰り返し、周りの人々を傷つけます。作 者の作品には、暴力や性的描写が多く登場しますが、それは現代における「神」に近い存在のあり方を問うものとも考えられます。朧の行動はどこへ向かうのかが描かれています。少し怖かったですが、花村萬月さん全開の初期作品です。 初期作品を読むと、作家の傾向がよくわかりますよね。 第119回 芥川賞受賞作品
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世界でいちばん美しい(小学館) 藤谷治
¥700
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2013/11/4 発行 ソフトカバー 普通じゃない人、せった君がピアノに人生の全てをかけ、30年という短い人生を全うします。生きてる途中、不器用ながらも全力で恋をした。 せった君と幼馴染の島崎君が共に成長ゆく過程が興味深く読めました。 島崎君はせった君にピアノの先生を紹介し、上手く上達しているらしいせった君に少しの嫉妬があるのです。そのとき、ピアノの先生が島崎君に「みんながモーツァルトやベートーヴェンになれるわけじゃない」と。「っていうより、みんな、なれない。一人ひとり、自分になるしかない。そして自分には限界がある」 せった君を庇うわけではなく、音楽に於いて、その他全般に於いても、人は、自分になるしか方法がない!ということを言いたかったのです。 幼馴染みの島崎君が語り手となり、頑張って生きたせった君のお話が進んでゆきます。 第31回織田作之助賞受賞作品 優しい内容なので寝る前読書にピッタリです。
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文身(祥伝社) 岩井圭也
¥750
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2020/3/20 発行 ハードカバー 自殺した弟が書いた小説をそのまま私小説とするために、弟と同じ人生を歩む須賀庸一のおはなしです。 須賀庸一は粗暴で酒飲みであり、業界での評判は良くない。けれども執筆依頼が絶えなかったのは、作品がすべて〈私小説〉だと宣言されていたからです。 作中、話が二転三転し、本当はどちらなのか?というあやしい感じになってきますが、それがこの作家のすごいところじゃないでしょうか。 弟は生きていたのか、庸一が書いていたのか、という問いに苦しめられる。 どんどん引き込まれて行きました。 上半期の直木賞候補までになった作家・岩井圭也さんの経歴を本作品で垣間見ることができました。
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令和元年の人生ゲーム(文藝春秋) 麻布競馬場
¥1,550
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2024/2/25 発行 ソフトカバー ●上半期 第171回直木三十五賞候補作品 四つの短編が収録されている。 第一話『平成28年』の主人公は、慶應大学に進学し、意識高い学生が所属するビジコン運営サークル「イグナイト」に入った男子学生。 第二話『平成31年』の主人公は、就活生に絶大な人気のあるメガベンチャー「パーソンズ」に入社した新卒の女性。 第三話『令和4年』は、なんとなく入社した会社の新規事業部で働く社会人7年目の男性。 最終話「令和5年」の舞台は、老舗銭湯である。 沼田という人がキーパーソンになるのですが、最後まで沼田を見届けて欲しいです。 90年代後半から2000年代に生まれたZ世代の価値観や生き方を描いた作品です。主人公の沼田くんは、周りの「意識が高い」若者たちと違い、あえて「何もしない」生き方を選びます。彼は会社で最低限の仕事をして、毎日定時に帰り、特に大きな夢や野心を持たず、22歳にして窓際族のような存在です。そんな彼の生き方が、平成の落ちこぼれなのか、令和の革命家なのかが問いかけられます。 2021年にTwitterで小説を書き始めた麻布競馬場は、すぐに「タワマン文学」という流行語を作りました。デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』が大ヒットし、第2作では「Z世代の生き方」をテーマにしました。
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夏の陰(角川書店) 岩井圭也
¥800
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2019/4/26 発行 ソフトカバー 立てこもり事件の犯人の息子・倉内岳。 岳を助けようとして殺された機動隊員の息子・辰野和馬の物語です。 加害者家族、被害者家族の苦しみを双方の息子を通して読者に突きつけてくる。 表紙の絵は剣道ですが、その2人が剣道の試合でぶつかり合うことになります。 とても重い物語でした。 この二人の心理描写が秀逸で、ぐんぐん読みました。 ここまで書き切ることのできる岩井圭也さんはすごい!と思います。
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楽園の犬(角川春樹事務所) 岩井圭也
¥1,000
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/8/31 発行 ハードカバー あらすじより 「時代が大きなうねりを見せる中、個人はどこまで自分の考えを持つことができる のか? そして、どこまで自らの意思を通すことができるのか? 南洋の地を舞 台にした壮大な物語がここに――。 1940年、太平洋戦争勃発直前の南洋サイパン。 日本と各国が水面下でぶつかり合 う地に、横浜で英語教師をしていた麻田健吾が降り立つ。 表向きは、南洋庁サイ パン支庁庶務係として。 だが彼は日本海軍のスパイという密命を帯びていた。 日 本による南洋群島の支配は1914年にさかのぼるが、海軍の唱える南進論が「国策 の基準」として日本の外交方針となったのは1936年だった。 その後、一般国民の 間でも南進論が浸透していった。 この地にはあらゆる種類のスパイが跋扈し、日 本と他国との開戦に備え、海軍の前線基地となるサイパンで情報収集に励んでい た。 麻田は、沖縄から移住してきた漁師が自殺した真相を探ることをきっかけ に、南洋群島の闇に踏み込んでいく……。」
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この部屋から東京タワーは永遠に見えない(集英社) 麻布競馬場
¥1,000
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) 2版 2022/10/9 発行 ソフトカバー 有名大学を出て大手企業に就職し、順風満帆のエリートコースを送るはずが、コースから外れて田舎に戻るという人生を送る人。 ここに出てくる話で地方出身者の東京での「挫折」を冷めた視点で描いています。 冷酷と思うか、当てはまると思うか、冷静に受け止められるか。そんなことを考えながら面白く読めました。 この作品は、いわゆる「タワマン文学」に属しています。 2016年ころから、地方出身者がタワマンに住み、そこでの生活を描いた作品はいくつかあります。そのなかのひとつです。 ペンネームの「麻布競馬場」は、大学卒業後8年間麻布十番に在住していたことから。 もうひとつは、東京に生きる人々を競走馬に例え、「好きに走りまわっているように見えて、実際には決まったコースを走らされている。 結局、ムチを打たれながら競争させられている。」 という皮肉を込めて名付けたそうです。 覆面作家なのでお顔はわかりません。
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暗い引力(光文社) 岩井圭也
¥700
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/12/30 発行 ソフトカバー 6編からなる短編集 人の心の闇がじわじわと暗い場所へ、もう後戻りはできない。 欲望、保身、嫉妬…さまざまな理由で人は嘘をつく。 妻に先立たれ養子の息子と向き合う老人。 仕事が忙しい妻を支える気弱な夫。 地方の美術館でくすぶり続ける学芸員。 倒産や理不尽なリストラで無職となった同級生たち。 借金苦から逃れようともがく老女。 会社ぐるみで不正を隠蔽しようとする社畜たち。 ひとつの嘘から、転がりだす悪意の連鎖。最後に残ったのは絶望か、それとも…。 堕ちていく6つの人生を描く岩井圭也のダークサイド作品集。 (「BOOK」データベースより) ≪目次≫ ・海の子 ・僕はエスパーじゃない ・捏造カンパニー ・極楽 ・蟻の牙 ・堕ちる
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本当に欲しかったものは、もう Twitterアンソロジー(集英社) 麻布競馬場ほか
¥500
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/4/10 発行 ソフトカバー 著者10名のアンソロジー ・麻布競馬場 ・霞が関バイオレット ・かとう ゆうか ・木爾 チレン ・新庄 耕 ・外山 薫 ・豊洲銀行 網走支店 ・pho ・窓際三等兵 ・山下 素童 5分後に、虚しい人生。 空虚なスキマ時間で読み切れる、22の傑作ショートショート。 (集英社より)
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身のある話しと、歯に詰まるワタシ(朝日新聞出版) 尾崎世界観
¥600
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2020/6/30 ソフトカバー エッセイです。 尾崎世界観と7人のアーティストとの会話になっています。 加藤シゲアキ、神田伯山、最果タヒ、金原ひとみ、那須川天心、尾野真千子、椎木知仁 それぞれに、自分の世界を持つ方々との興味深いお話が繰り広げられています。 「書くこと」「演じること」から「コンプレックス」について。7人プラス尾崎世界観の真意を突いた会話は文章にすると一層、私たちに問いかけてくるような出来事ばかりでした。 自己啓発本としてもよさそうで、小説として読んでもOKで、会話劇でもいい。そんな一冊。 気負いなく読めます。
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無人島の二人(新潮社) 山本文緒
¥1,200
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) 2版 2022/11/5 発行 ソフトカバー (ほぼ新品)状態です 『120日以上生きなくちゃ日記』 (以下、本文抜粋) 2021年4月、私は突然がんと診断され、そのとき既にステージはまと だった。治東法はなく、抗がん剤で進行を遅らせることしか手立てはなかった。 昔と違って副作用は軽くなっていると聞いて臨んだがん剤治療は地獄だった。 がんで死ねより先にがん剤で死んでしまうと思ったほどだ。医師やカウンセラ し、そして夫と話し合い、私は授和ケアへ進むことを決めた。 そんな2021年5月からの日記です。 ***** 目次は細かく日にちごとに分けられています。 筆者自身の、死にゆく自分を客観的に見て、すべてを書き残している。 腹水が増えてお腹が苦しく、ウエストサイズが大きいのでユニクロで大きなサイズのボトムを買ったこと、など書かれていて、これ以上の体験談はないんじゃないだろうかと思いました。 ラストの日記が言葉では言い表せない、感情に支配されました。 改めて、お亡くなりになったのだと実感し、涙が止まりませんでした。 病に罹った方、同じような症状の方、毎日不安に過ごしている方、是非、読んでみてください。
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本は友だち(みすず書房) 池内紀
¥1,800
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2015/1/9発行 本は友だちとして、著者が大切に読んできた本たちを通じて、それぞれの本に宿る魅力的な人生を綴るエッセイ集。古今の本が紹介されています。 本が好きな人や、異なるジャンルの本に興味がある人におすすめです。 著者の独自の視点や文章の流れに魅了され、新たな読書体験ができると思います。 文章が流れるようで読みやすく、幅広いジャンルの本が取り上げられていますので、ワクワクします。
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今日の花を摘む(双葉社) 田中兆子
¥1,650
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/6/24 発行 田中兆子:1964(昭和39)年、富山県生まれ。8年間のOL生活を経て、専業主婦となる。 (あらすじ) 私の趣味は、男性との肉体を伴ったかりそめの恋。それを、私はひそかに「花摘み」と呼んでいる――。 出版社に勤めるかたわら茶道を嗜む愉里子は、一見地味な51歳の独身女性。 だが人生を折り返し、「今日が一番若い」と日々を謳歌するように花摘みを愉しんでいた。 そんな愉里子の前に初めて、恋の終わりを怖れさせる男が現れた。 20歳近く年上の茶の湯の粋人、万江島だ。だが彼には、ある秘密があった……。 肉体の衰えを感じ始めた世代のリアルな性愛を軸に、自分を偽らずに生きる女たちの姿と、その連帯を描いた著者初の長編小説。 中高年世代の性愛にタブーを怖れず挑んだ衝撃作『今日の花を摘む』(田中兆子著)が、 第3回『本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞』受賞 https://books.bunshun.jp/articles/-/8555
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水都眩光 幻想短編アンソロジー(文藝春秋) 高橋英里、マーサ・ナカムラ、大木美沙子、石沢麻衣、沼田真佑、坂崎かおる、大濱美子、吉村萬一、谷崎由依
¥1,500
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) (ほぼ新品) ≪初版≫ 2023/9/30 発行 ハードカバー 文學界2023年5月号特集12人の“幻想”短篇競作から、9つの短編を収録して2023年9月文藝春秋刊。 ***** それぞれの作家さんの幻想世界が描かれていて、ある意味、ドキドキしながらの読書です。 作家によってその人なりの幻想世界があり、どれもこれも乾いた心が潤った気がしました。 静かな夜に一話ずつ読みたい本です。 【目次】 ラサンドーハ手稿 高原英理 串 マーサ・ナカムラ うなぎ 大木芙沙子 マルギット・Kの鏡像 石沢麻依 茶会 沼田真佑 いぬ 坂崎かおる 開花 大濱普美子 ニトロシンドローム 吉村萬壱 天の岩戸ごっこ 谷崎由依
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ほんとうの花を見せにきた(文藝春秋) 桜庭一樹
¥380
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2014/9/25 発行 ハードカバー ママが死んでいる場面から始まります。次いで姉さんの死体の様子。少年の僕は歯をがちがち鳴らしながら隠れている。 家族を皆殺しにされ、唯一生き残った少年が、吸血鬼の力を借りて生き抜く物語です。 少年と吸血鬼の友情、そして初恋を描いています。 絶望的な状況から救われた少年は、愛しい家族との別れを乗り越え、吸血鬼のバンブーと共に生き抜いていきます。バンブーにとって人間と暮らすことは大きな罪。その罰が下されるときがいずれやってくる。そんな中、出会った少女のバンブーに少年は初めての恋に落ちます。 少年は年を取るけれど、バンブーは年を取らない。120歳まで生きます。 言うなれば吸血鬼の大河ドラマです。バンブーたちが切なくて、美しい物語でした。 私はこういうお話は初めてだったので未知の世界を体験できて楽しかったです。 頭の中がリフレッシュされますよ。
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ルンタ(講談社) 山下澄人
¥1,100
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪2版≫ 2017/2/6発行 ソフトカバー 人間という暮らしにうんざりした、というわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。 生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。 天性の言語感覚と非凡な着想で書かれた傑作。 デビュー作『星になる』も収録されています。 ****** ふわふわと現実と夢の中を彷徨うような感覚なんだけれど、意識はしっかりしていて、 今、自分がいる場所ややらねばならないことがわかっている。 なのにふわふわして、なにやら悲しいという読後感。 こんな読後感はなかなか得られないなぁと、思います。言葉にしづらい感覚を残すのは、 やはり山下澄人さんだからかもしれません。
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赤泥棒(講談社) 献鹿狸太朗
¥1,480
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/3/27発行 ハードカバー 町田康さん推し! 言葉に幅があり、しかもそれが的確に使用されている。辛辣な個性とその周囲を無情に描いていてよい。(文藝賞選評より) 現役慶応大学院生であり、漫画『踊るリスポーン』の著者・三ヶ嶋犬太朗が鮮烈の文芸デビュー! 「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する。 表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」 「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「寄食のダボハゼ」をおさめた短編集。 (ebookより) 読まれた形跡がないのでほぼ新品に近い状態です。とてもきれいです。
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ミシンと金魚(集英社) 永井みみ
¥550
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) 9版 2022/12/11発行 ハードカバー 永井みみ:ケアマネージャーとして働きながら執筆した本作で第45回すばる文学賞を受賞。 認知症のカケイから見た世界を物語にしています。 花が美しい今日、私は死ぬ。 認知症のカケイは、〝みっちゃんたち〟に介護されながら生きている。 ある日、病院からの帰り道、〝みっちゃんの一人〟に「これまでの人生は幸せだった?」と聞かれ、カケイは過去を語り始める。父からの暴力、母の死、継母からの虐待、夫の失踪とその後の厳しい生活。そんな中、カケイは女の赤ん坊を産み、その子・みっちゃんとの幸せな日々を過ごしますが、思い出には苦しみと喜びが交錯していました。 ラスト数ページは、ああ、人はこうやって死んで逝くんだな、と。 ホントの死に際なんて誰も知らないけど、そう感じました。 これまでに死んでいった、近くて親しい人たちが、頭に浮かびました。 かなり衝撃を受けた作品です。
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生命式(河出書房新社) 村田沙耶香
¥600
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2019/10/30発行 ハードカバー 「生命式」の語り手である私=池谷真保は、30年くらい前、まだ人肉を食べる習慣がなかったころのことを覚えており、人々の価値観の急激な変化に、違和感を覚えながら生きている。鎌倉の海で出会う見知らぬ男性とのやりとりが鮮烈だ。 〈「そのこと、変だって思いますか? 世界はこんなにどんどん変わって、何が正しいのかわからなくて、その中で、こんなふうに、世界を信じて私たちは山本を食べている。そんな自分たちを、おかしいって思いますか?」/男性は首を横にふった。/「いえ、思いません。だって、正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」〉 物語はこのあと雄大で美しい結末へと向かう。 何が正しくて何が狂っているのか。収録されたどの作品にも答えはない。 読めば読むほど自分の位相が、ただひたすらにずれていくだけだ。 そしてそのことを清々しく感じるのはなぜだろう。(本の雑誌より) ***** ザ村田沙耶香という感じの短編12編が織り込まれている。 村田沙耶香さんの本を読むたびに思うのは、この世の中に間違っていることなんてなくて、反対に正しいものもない。 あるのは自分の意思と価値観ばかり、という非常に個人的な感想を持っています。 これは読者によって違ってきますし、違って当然!その方が断然面白いです。 あなただけの読み方を楽しんで欲しいです( ◠‿◠ )
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グレイスレス(文藝春秋) 鈴木涼美
¥50
SOLD OUT
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) (ほぼ新品) 自筆サイン入り ≪初版≫ 2023/1/14発行 ハードカバー デビュー小説『ギフテッド』に続き、芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作。 主人公はアダルトビデオ業界で化粧師(メイク)として働く聖月(みづき)。 彼女が祖母と共に暮らすのは、森の中に佇む、意匠を凝らした西洋建築の家である。 まさに「聖と俗」と言える対極の世界を舞台に、「性と生」のあわいを繊細に描いた新境地。 (あらすじより)
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風の歌を聴け(講談社) 村上春樹
¥700
【良好】(非常に良い/良好/並) 26版 1988/8/15発行 ハードカバー 群像新人賞受賞。 本書は1979年に村上春樹がデビューした作品です。この作品は、彼の独特な文体とテーマが初めて現れたもので、彼の文学の出発点となりました。物語は夏の思い出をテーマにしており、主人公が過ごした大学時代の日々を振り返ります。日常の小さな出来事が、後になってかけがえのない思い出となることや、年を重ねるごとに自分が変わっていくことを感じながらも、子どもの頃の大切な何かを守り続けたいという思いが描かれています。
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きれぎれ(文藝春秋) 町田康
¥50
SOLD OUT
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2000/7/10発行 ハードカバー 表紙にスレがありますが、そのほかは良好です。 2000年上半期芥川賞受賞作 バンドをやっている町田康さんならではの芸術的かつ音楽的な作品で、 テンポよくきれぎれに物語にはまってゆきます。 人間とは何か?という問いをずっと突き詰めてゆく感じ。 読後は妙にスラスラ読めてしまった、これでいいのか・と自分を疑いたくなる。 が、しかし、これが町田さんの術だと思う。 初期の代表的な作品です。