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幸いなるかな本を読む人(毎日新聞出版) 長田弘
¥1,600
非常に良い(非常に良い/良好/並) 2版 2009/4/5 発行 ハードカバー 2009年 第24回 詩歌文学館賞・現代詩部門受賞 この詩集は、作者の愛する25冊の本、それぞれについて一篇の詩をあてるという形になっているのです。 更に、表紙には読書をする少女の天使の絵、25の詩の扉には、一文字ずつ古いアルファベットのレタリング付きというお洒落さ! で、その25冊の本というのもまた、たのもしい! 本書の詩を読むと、この本はこういう感じなんだ、と違った側面からやってくるので、通常の読書感想とは全く違ったアプローチです。 この詩を読むと、あなたもポエムを作りたくなるかも知れません! 新しい世界が開けますね。 ・梶井基次郎「檸檬」 ・プラトン「ソクラテスの弁明」 ・「荘子 内篇」 ・尾崎一雄「美しい墓地からの眺め」 ・プーシキン「大尉の娘」 ・「エッダ」 ・カント「永遠平和のために」 ・深沢七郎「笛吹川」 ・「アラビアンナイト」 ・アウグスティヌス「告白」 ・アンデルセン「雪の女王」 ・ベンヤミン「ベルリンの少年時代」 ・中島敦「悟浄出世」 ・ホーソーン「人面の大岩」 ・モンテーニュ「エセー」 ・オヴィディウス「変身物語」 ・ニーチェ「暁光」 ・夏目漱石「草枕」 ・「春香伝」 ・カフカ「日記」 ・フォークナー「エミリーへの薔薇」 ・ゴーゴリ「書簡」 ・スピノザ「エティカ」 ・鴨長明「方丈記」 ・ポエティウス「哲学の慰め」
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猫町 他17編(岩波文庫) 萩原朔太郎
¥420
良好(非常に良い/良好/並) 26版 2022/7/25 発行 「私」は東京から北越の温泉に向かう途中、偶然「繁華で美しい町」に足を踏み入れます。 そこで出会ったのは、人間の姿をした猫たちの大群。 この『猫町』は、詩集『青猫』の感覚を引き継ぎ、幻想的な短編や散文詩、随筆を十八篇収めています。 詩人としての朔太郎の独特な視点と詩情が際立っており、魅力的な小品集となっています。
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敵(新潮社) 筒井康隆
¥1,100
良好(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1998/1/30 発行 函あり ハードカバー 筒井康隆といえば『旅のラゴス』の印象があり、幻想的で哀愁のただようものというイメージがありました。しかし、やはり、このひとはすごいです。 本書のラストは圧巻でした。紙の本ならではの見ごたえがあります。 さて、『敵』ですが、主人公は75歳の渡辺儀助。彼は大学教授を辞めて10年になります。 愛する妻を失い、一人静かに暮らす日々を送っています。料理や晩酌を楽しみ、時には酒場にも出かける彼ですが、年下の友人とは疎遠になり、かつての教え子・鷹司靖子が訪れることはありません。 そんな彼のもとに、病が忍び寄りますが、春にはまた皆に会えるかもしれないと希望を抱きつつ生活するんです。 この作品は、儀助の私生活や夢、妄想を豊かに描写し、時には愉快さも交えながら進行します。「神」をテーマにした展開も見事だと感じましたし、読み進めるうちにその文章力に感服します。 ラストの表現は、紙の本ならではの特別なものとなっています。
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奇跡 ミラクル(みすず書房) 長田弘
¥1,300
非常に良い(非常に良い/良好/並) 6版 2021/1/22 発行 ハードカバー 第55回毎日芸術賞受賞 「奇跡」というのは、めったにない稀有な出来事というのとはちがうと思う。それは、存在していないものでさえじつはすべて存在しているのだという感じ方をうながすような、心の働きの端緒、いとぐちとなるもののことだと、わたしには思える。 日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたし(たち)にとっての、取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ。 たとえば、小さな微笑みは「奇跡」である。小さな微笑みが失われれば、世界はあたたかみを失うからだ。世界というものは、おそらくそのような仕方で、いつのときも一人一人にとって存在してきたし、存在しているし、存在してゆくだろうということを考える。 「われわれは、では、何にたよればいいのか? われわれが真なるものと、虚なるものとを弁別するのに、感覚よりたしかなものがあるだろうか?」(ルクレティウス「物の本質について」) (著者「あとがき」より)
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疼くひと(中央公論新社) 松井久子
¥550
非常に良い(非常に良い/良好/並) 7版 2021/9/10 発行 この恋愛小説は知恵や経験が絡む切ない恋の物語。 脚本家の唐沢燿子は古稀を迎え、老いを感じ始めていますが、SNSで出会った年下の男性との交流が彼女の生活を一変させます。彼の言葉に心を揺さぶられ、次第に彼にのめり込んでいく燿子。人生の後半に始まる大人の恋の行方はどうなるのでしょうか?心理描写が深く、少しくどく感じる場面もありますが、意外な展開が待っています。
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蒲団・重右衛門の最後(新潮文庫) 田山花袋
¥450
非常に良い(非常に良い/良好/並) 89版 2022/10/30 発行 田山花袋(たやま かたい)は、1872年に栃木県(現在の群馬県)で生まれ、1930年に亡くなりました。彼の作風は人間の内面や社会の現実を赤裸々に描くことで知られています。 代表作には『蒲団』や『田舎教師』があります。 特に『蒲団』は、中年男性の若い女性への複雑な思いを描き、当時の文壇に衝撃を与えたのです。 ほかにも紀行文や詩、記録文学なども手がけ、当時の交通事情や風俗を伝える貴重な記録となっているそうです。 『重右衛門の最後』を併録。
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小銭をかぞえる(文春文庫) 西村賢太
¥50
SOLD OUT
非常に良い(非常に良い/良好/並) 4版 2011/6/5 発行 金欠で妄想に悩む主人公は、愛憎や暴力に翻弄される最底辺の男です。彼の壮絶な日々は悲惨さを超えて笑いを誘うほど。 西村賢太さんの傑作私小説2篇は、暴言を吐きながらも優しさを見せる一面が描かれています。中卒の彼は、年下の大卒の女性と同棲しており、日常の何気ないシーンがとてもユーモラスに表現されています。自宅やデパートに行く会話のやり取りが秀逸なのでクスッと笑える場面もあります。 ちなみに、私は、西村賢太さんの作品はどれも不思議と一気読みできてしまいます。 私小説であり、西村賢太さん自身が文学に詳しいため、作品中に登場する作家や作品の情報から文学の知識も得られるのが良いところであり、私にとっての西村賢太の楽しみ方の一つです。
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ちくま日本文学全集 織田作之助 1913-1947(筑摩書房) 織田作之助
¥800
良好(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1993/5/20 発行 織田作之助得意の短編集です。織田作は短編の名手なので本当に面白い。 本書にはもちろん、代表作『夫婦善哉』や『勧善懲悪』『アドバルーン』など名作が入っているので、楽しめます。 織田作を満喫してくださいね!
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〖新装版〗父の詫び状(文春文庫) 向田邦子
¥450
良好(非常に良い/良好/並) 44版 2022/10/5 発行 傑作エッセイです。心に残る部分は、頑固で愛情を口に出せないお父さんの話が印象的です。例えば、子どものために庭に池を作ろうとしたのに、けがをしてしまい、すぐに埋めてしまうという少し不器用なところが、昭和の雰囲気を感じさせます。 近所の人や親戚に囲まれて、のびのびと育った向田邦子さんの感性が、このエッセイからも伝わってきて、読むと心が穏やかになります。 また、巻末の解説を沢木耕太郎さんが書いていて、これがとても面白く、解説だけでも楽しめる内容です。 向田邦子さんに興味のある方は読んでみると楽しめます!
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眠れるラプンツェル(幻冬舎文庫) 山本文緒
¥400
良好(非常に良い/良好/並) 8版 2000/6/5 発行 この作品は、女性の孤独をいろんな角度から描いていますが、特に主人公の孤独感がすごく強いです。 物語は、既婚で夫とは信頼関係のない28歳の主婦が、15歳年下の中学1年生に恋をするという内容です。 28歳で「おばさん」とされている点に違和感がありましたが、20年前の作品なので、そこは仕方ないだろうと思います。また、今なら児童虐待と批判されそうな部分もあります。 けれど、最後にはほろ苦さと甘さが残る印象的な作品だと感じました。 マンションの部屋を塔と見立てて、書かれているところは誰もが感じる閉塞感や安心感を醸し出しています。きっと誰もが感じることかな?と思いました。
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ちくま日本文学 三島由紀夫 1925-1970(筑摩書房) 三島由紀夫
¥1,000
非常に良い(非常に良い/良好/並) 2版 2015/6/5 発行 この本のあとがきを書かれた、森毅さんは「三島由紀夫の長い作品は、一冊に収めるのが難しく、代表作も出版社との契約で使えなかった」と説明しています。そのため、収録されたのは短編や戯曲、エッセイが中心で、普段あまり読めないものも入っています。たとえば、「海と夕焼」を除けば、新潮文庫では読めないものが多く含まれています。 三島由紀夫の魅力は、代表作だけでなく、他の作品も楽しめるところです。たとえば、学生運動を背景にした戯曲「喜びの琴」や、短編「中世」があります。 「中世」は三島が20歳のときに書いた美しい作品で、まるで蒔絵細工のように華やかな文体が特徴。 他の作品も面白くて、満足できると思います。 三島由紀夫の代表作以外の作品に興味がある方はぜひ、読んででみてくださいね。
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美しい心臓(新潮文庫) 小手毬るい
¥50
SOLD OUT
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫2016/2/1発行 DVから逃れた私は、偶然出会った既婚者の彼との秘密の関係に救われました。彼との密会で感じた甘い感情は、私を新しい場所へと導きます。しかし、最終的に私が望んだのは、彼の死でした。 この物語は、禁断の恋を描いた不倫小説です。 恋に溺れる女性は、時に恐ろしいほど複雑ですが、その姿には可愛らしさもあり、多くの人が共感できるものだと思います。
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ゲルマニウムの夜(文藝春秋) 花村萬月
¥800
【並】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 1998/9/20 発行 天、小口にシミ、ヤケあり。シミが気にならない方なら大丈夫です。読むには問題ありません。クリーニング済 この物語は、殺人を犯した青年・朧(ろう)が、自分が育った修道院兼教護院に戻って身を隠す話です。 彼は修道院でも暴力的な行為や性的な行動を繰り返し、周りの人々を傷つけます。作 者の作品には、暴力や性的描写が多く登場しますが、それは現代における「神」に近い存在のあり方を問うものとも考えられます。朧の行動はどこへ向かうのかが描かれています。少し怖かったですが、花村萬月さん全開の初期作品です。 初期作品を読むと、作家の傾向がよくわかりますよね。 第119回 芥川賞受賞作品
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木曜日にはココアを(宝島社文庫) 青山美智子
¥500
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪20版≫ 2023/1/3発行 私たちは気づかないうちに、誰かを助けていることがあります。散歩をしたり、卵焼きを作ったり、ココアを注文したりする日常の出来事がつながって、誰かの命を救うこともあります。この本は、小さなカフェ「マーブル・カフェ」での12の物語が描かれており、読むと心が温かくなります。特に幼稚園の先生の話は感動的で、どの話も希望に満ちた結末が待っています。何度も読み返したくなる優しい作品です。
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余命一年、男をかう(講談社文庫) 吉川トリコ
¥450
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2024/5/15発行 片倉唯は40歳、節約が趣味の独身女性です。ある日、無料のがん検診を受けたところ、進行した子宮がんと宣告されます。手術を勧められますが、唯は「これでやっと死ねる」と少しほっとします。そんな時、病院のロビーでピンク髪の若い男性が現れ、「お金持ってない?」と声をかけてきました。この出会いをきっかけに、唯と彼の奇妙な関係が始まり、彼女の人生が少しずつ変わっていく物語です。サクサクとした文章や、登場人物の会話に感情移入しやすいので、すぐに読めてしまいます。 第28回島清恋愛文学賞受賞作
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続・伊藤比呂美詩集(思潮社) 伊藤比呂美
¥900
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫2011/7/30発行 詩人、伊藤比呂美さんをご存知の方もそうでない方もいらっしゃいます。 独特の世界をもち、何も怖くない素振りのある感じが、わたしは好きです。 「詩」は人の心にどう響くか?それは言葉の選び方、文章の運び方、美的センス、美術品です。それらを味わうにはぴったりの詩集だと思います。 以下、p35「ナシテ、モーネン」より抜粋しますね。 消えてゆく言語はスウィートだ、 関係がそこで消えても、 彼の記憶がそこで消えても、 声に出し消えてゆく言語はとてもスウィートだ、
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『赤×ピンク』(角川文庫)/桜庭一樹 『Love Songs』(幻冬舎文庫)/唯川恵他
¥450
【並】(非常に良い/良好/並) 2冊セットです ◆『赤×ピンク』(角川文庫)/桜庭一樹 ≪初版≫ 2008/2/25発行 深夜の六本木の廃校で、少女たちが毎晩非合法のファイトを行っています。彼女たちは悩みを抱えつつも、格闘技を通じて答えを見つけようとしています。この物語は、壊れたけれど純粋な少女たちのサバイバルと愛を描いており、自分について悩む女性にとって参考になる本です。 ◆『Love Songs』(幻冬舎文庫)/唯川恵・山本文緒・角田光代・桜井亜美・横森理香・狗飼恭子・江國香織・小池真理子 18版 2005/1/25発行 この本は、8人の作家による恋愛短編集です。特に小池真理子の「STORM」は読みやすく、情景が鮮明で感情移入しやすいです。主人公が過去を振り返っても仕方ないと感じるセリフに心を打たれます。この本には女性作家の作品が集まっており、それぞれの個性がよく表れています。私のお気に入りは狗飼恭子の「やさしい気持ち」で、好きな人への想いに共感できました。
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密室論(七月堂) 朝吹亮二
¥50
SOLD OUT
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫2017/7/22発行 ソフトカバー 《『密室論』復刊》 指のおもむくままに頁をめくり、 目のおもむくままにそれを読む。 あるいは、任意に開かれた頁に記された文字を、 声に出してみてほしい。 紙と声、また紙と指、指と目とのあいだで執りおこなわれる性愛に、 つかのま溺れるだろう。(本文より)
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嘘(ポプラ社) 宮沢賢治、与謝野晶子、エロシェンコ
¥800
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪3版≫2012/3/24発行 ソフトカバー 心からこぼれ落ちる その言葉は本物ですか 村の落ちこぼれ少年・斉藤平太は、父の威信で職に就いたものの、間抜けな失敗ばかり。皆の嘲笑に嫌気がさして心機一転上京するが…(宮沢賢治『革トランク』)。級友の作り話遊びに退屈した「私」は、「今迄隠して居ましたけれど」と自らの秘密を語りはじめた(与謝野晶子『嘘』)。「わたしたちは色が白いから、いちばん文明が進んでいるのですか?」――盲目の少年の問いに、大人たちは狼狽する(エロシェンコ『ある孤独な魂』)。曇りなき心で綴られた名篇が、鏡となって虚構を映し出す。(ポプラ社より)
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世界でいちばん美しい(小学館) 藤谷治
¥700
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2013/11/4 発行 ソフトカバー 普通じゃない人、せった君がピアノに人生の全てをかけ、30年という短い人生を全うします。生きてる途中、不器用ながらも全力で恋をした。 せった君と幼馴染の島崎君が共に成長ゆく過程が興味深く読めました。 島崎君はせった君にピアノの先生を紹介し、上手く上達しているらしいせった君に少しの嫉妬があるのです。そのとき、ピアノの先生が島崎君に「みんながモーツァルトやベートーヴェンになれるわけじゃない」と。「っていうより、みんな、なれない。一人ひとり、自分になるしかない。そして自分には限界がある」 せった君を庇うわけではなく、音楽に於いて、その他全般に於いても、人は、自分になるしか方法がない!ということを言いたかったのです。 幼馴染みの島崎君が語り手となり、頑張って生きたせった君のお話が進んでゆきます。 第31回織田作之助賞受賞作品 優しい内容なので寝る前読書にピッタリです。
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文身(祥伝社) 岩井圭也
¥750
【良好】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2020/3/20 発行 ハードカバー 自殺した弟が書いた小説をそのまま私小説とするために、弟と同じ人生を歩む須賀庸一のおはなしです。 須賀庸一は粗暴で酒飲みであり、業界での評判は良くない。けれども執筆依頼が絶えなかったのは、作品がすべて〈私小説〉だと宣言されていたからです。 作中、話が二転三転し、本当はどちらなのか?というあやしい感じになってきますが、それがこの作家のすごいところじゃないでしょうか。 弟は生きていたのか、庸一が書いていたのか、という問いに苦しめられる。 どんどん引き込まれて行きました。 上半期の直木賞候補までになった作家・岩井圭也さんの経歴を本作品で垣間見ることができました。
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令和元年の人生ゲーム(文藝春秋) 麻布競馬場
¥1,550
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2024/2/25 発行 ソフトカバー ●上半期 第171回直木三十五賞候補作品 四つの短編が収録されている。 第一話『平成28年』の主人公は、慶應大学に進学し、意識高い学生が所属するビジコン運営サークル「イグナイト」に入った男子学生。 第二話『平成31年』の主人公は、就活生に絶大な人気のあるメガベンチャー「パーソンズ」に入社した新卒の女性。 第三話『令和4年』は、なんとなく入社した会社の新規事業部で働く社会人7年目の男性。 最終話「令和5年」の舞台は、老舗銭湯である。 沼田という人がキーパーソンになるのですが、最後まで沼田を見届けて欲しいです。 90年代後半から2000年代に生まれたZ世代の価値観や生き方を描いた作品です。主人公の沼田くんは、周りの「意識が高い」若者たちと違い、あえて「何もしない」生き方を選びます。彼は会社で最低限の仕事をして、毎日定時に帰り、特に大きな夢や野心を持たず、22歳にして窓際族のような存在です。そんな彼の生き方が、平成の落ちこぼれなのか、令和の革命家なのかが問いかけられます。 2021年にTwitterで小説を書き始めた麻布競馬場は、すぐに「タワマン文学」という流行語を作りました。デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』が大ヒットし、第2作では「Z世代の生き方」をテーマにしました。
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夏の陰(角川書店) 岩井圭也
¥800
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2019/4/26 発行 ソフトカバー 立てこもり事件の犯人の息子・倉内岳。 岳を助けようとして殺された機動隊員の息子・辰野和馬の物語です。 加害者家族、被害者家族の苦しみを双方の息子を通して読者に突きつけてくる。 表紙の絵は剣道ですが、その2人が剣道の試合でぶつかり合うことになります。 とても重い物語でした。 この二人の心理描写が秀逸で、ぐんぐん読みました。 ここまで書き切ることのできる岩井圭也さんはすごい!と思います。
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楽園の犬(角川春樹事務所) 岩井圭也
¥1,000
【非常に良い】(非常に良い/良好/並) ≪初版≫ 2023/8/31 発行 ハードカバー あらすじより 「時代が大きなうねりを見せる中、個人はどこまで自分の考えを持つことができる のか? そして、どこまで自らの意思を通すことができるのか? 南洋の地を舞 台にした壮大な物語がここに――。 1940年、太平洋戦争勃発直前の南洋サイパン。 日本と各国が水面下でぶつかり合 う地に、横浜で英語教師をしていた麻田健吾が降り立つ。 表向きは、南洋庁サイ パン支庁庶務係として。 だが彼は日本海軍のスパイという密命を帯びていた。 日 本による南洋群島の支配は1914年にさかのぼるが、海軍の唱える南進論が「国策 の基準」として日本の外交方針となったのは1936年だった。 その後、一般国民の 間でも南進論が浸透していった。 この地にはあらゆる種類のスパイが跋扈し、日 本と他国との開戦に備え、海軍の前線基地となるサイパンで情報収集に励んでい た。 麻田は、沖縄から移住してきた漁師が自殺した真相を探ることをきっかけ に、南洋群島の闇に踏み込んでいく……。」