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伯爵夫人（新潮社）　蓮見重彦

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≪3版≫2016/7/5発行

第29回三島由紀夫賞受賞作品

「“白”に包まれた一夜の夢、あなたも伯爵夫人の魔術に囚われる」──そんな言葉がふと心に引っかかったのなら、この物語はきっとあなたのためのものです。

舞台は戦時下の東京・帝国ホテル。受験を控えた青年・二朗が、和装の謎めいた伯爵夫人と出会い、知らなかった世界へ導かれてゆきます。

純粋さと官能、ユーモアと知性が交差する幻想の一夜。彼の内なる変化は、私たちの中に眠る“まだ知らない自分”をも呼び覚ましてくれます。

何度も揺さぶられ、戸惑いながらも、そこにあるのは再生の予感――私は読み終えたあと、まるで「白」の光に包まれたような、静かな余韻に浸りました。

現状に閉塞感を感じている方、自分の殻をそっと破ってみたい方へ。この一冊が、心の扉を開くきっかけになりますように。

＜蓮實重彦さんについて＞
蓮實重彦さん（1936年生まれ）は、文芸・映画評論家であり、フランス文学者、小説家です。東京大学文学部卒業後、ソルボンヌ大学で博士号を取得。東大で教鞭を執り、総長も務めました。フランス現代思想を日本に紹介し、映画評論でも高く評価されています。著作多数。