2025/05/08 11:44
こんにちは。
新緑がやわらかな風に揺れる季節となりましたね。お元気でお過ごしでしょうか。
今日は、古本を愛する皆さまと一緒に、少しだけ時をさかのぼって、江戸時代の本のお話をしてみたいと思います。
今、私たちの手元にある古本も、かつては誰かの大切な一冊だったのだと思うと、不思議と胸があたたかくなります。
江戸の本屋さんと本づくり
江戸の町には、本を売るだけでなく、自ら本を作る「本屋さん」がたくさんありました。
木版印刷という技術を使って、物語や実用書、教養書まで、さまざまな本が作られ、神田や日本橋のあたりは、にぎやかな本の世界が広がっていたそうです。
そうして生まれた一冊一冊が、やがて人の手を離れ、また別の誰かの手へと渡っていく…。本は、昔から人の暮らしの中を静かに旅してきたのですね。
貸本屋さんと読書の楽しみ
当時、本はとても高価なものでした。
それでも多くの人が読書を楽しめたのは、「貸本屋さん」のおかげです。
物語だけでなく、料理本や手習いの本など、日々の暮らしに寄り添う本を貸し出して、人々に本の世界を届けていました。
中には、町を歩いて本を貸す移動式の貸本屋さんもいたのだとか。人々のそばに、本のある風景があったのですね。
古本屋さんのはじまり
何度も何度も読まれた本たちは、やがて古本として、新しい持ち主との出会いを待つようになります。
江戸の後期には、古本を専門に扱うお店も現れたそうです。
当時の人々は、「新しいかどうか」ではなく、「面白いか、役に立つか」を本の価値と考えていたといいます。その考え方、なんだか今の私たちにも通じるものがありますね。
古本に宿るぬくもり
古本には、前の持ち主のぬくもりが、そっと残っていることがあります。
ページの端の折り目や、小さな書き込みから、どんなふうに読まれていたのかを想像すると、静かな感動があります。
本は、時を超えて人と人をつなぐ、不思議であたたかい存在なのだと思います。
今日も『柚香の森』では、そんな物語をそっと包んだ一冊との出会いをお届けできたらと思っています。
どうぞ、ごゆっくりとお過ごしくださいね。