2025/09/11 14:25
こんにちは。柚香の森の店主です。
空は少しずつ高くなりはじめたように見えるのに、昼間はまだ真夏のような日差しが続いていますね。
「もう9月なのに…」と、季節の歩みに身体がついていけない日もあるかもしれません。
どうぞ、ご無理なさらず、お元気にお過ごしくださいね。
そんな残暑の中で、ふと手に取ってみたくなるのが、恋をめぐる物語です。
人を想う気持ちは、きっと季節と同じくらい移ろいやすくて、でも心の奥にずっと残るもの──
恋愛小説や恋愛論には、そんな不確かで、それでいて確かな気持ちが、静かに描かれているように思います。
今日は本棚の中から、9月のはじまりにそっと開いてみたくなる「恋の本」をいくつかご紹介しますね。
たとえば、スタンダールの『恋愛論』。
19世紀に書かれた恋愛論でありながら、その洞察の鋭さは今もなお心に迫るものがあります。
恋することとは? 想いとは? その根源を探るようなこの一冊は、秋の入口で「私の気持ちって何だったんだろう」とふと立ち止まりたくなる時に、静かに寄り添ってくれる気がします。
また、小池真理子さんの『恋』は、恋愛のやさしさと残酷さ、そのどちらもを抱えた物語。
深いところで「人と人とが出会う」ということを描いていて、読むたびに胸の奥がきゅっとなります。
まるで、暑さのなかにひんやりと吹く風のように、感情を揺らす一冊です。
そして、野谷文昭訳による『赤い唇』。
甘く、そしてどこか切ない空気が、南米文学らしい情熱とともに漂っています。
情景や香りまで思い出せるような、そんな恋の記憶に触れたくなる夜におすすめです。
最後に、少し変化球でご紹介したいのが、竹久夢二による『恋愛論』。
詩人であり画家でもある夢二の目に映った「恋」は、どこか儚く、美しい幻想のよう。
言葉のひとつひとつが、心の奥で静かに響いてきます。
恋愛は、甘く、苦く、そしてとても個人的なもの。
けれど、だからこそ物語の中に登場する誰かの「恋」に、ふと自分を重ねたり、遠くからそっと見つめたり──
そんな時間が、夏の終わりにほんの少し心をやさしくしてくれるかもしれません。
まだ暑さは続きそうですが、夜風が心地よくなったら、ひとりの時間にそっと恋の本を開いてみてください。
心の中に、小さな秋の気配がやってきますように。
店主より

