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めし(新潮文庫) 林芙美子

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〖古書〗
≪35版≫ 1975/4/30発行
経年のヤケあり。ビニールカバーしてあります。


生き方の上で消極的な 主人公・三千代と積極的な里子は生活の拠りどころを失った女性のお話です。

里子の場合は父や母から背いてゆき、
三千代の場合は 夫からはなれて行こうとする。

三千代の夫・初之輔も、 里子の父や母も、三千代や里子を愛していないわけではない。あるいは、むしろあたたかい愛で、それぞれに三千代や里子をつつんでいるといえるだろう。
それなのに……、というのが本題であります。

三千代は結婚生活に少しも希望がもてず、夫の初之輔に不満をぶちまけるが理解されない。
「どうせ、私は、馬鹿ですよッ。朝から、晩まで、洗濯と、御飯ごしらえで、あくせくしていて、たまに、外に出て行っても、厭なことばっかり」(本文より抜粋)

 
夫・初之輔と別れて上京しようと決心した三千代が、その前夜、二階で寝ている夫のところから、 階下の自分の寝床へおりて行こうとし、またひきかえして暗い補子段を上りかける場面がある。

「暗い梯子段へ行き、静かに、二階へ上りかけたが、梯子段の途中で、三千代は引きかえして、暗い梯子へ行き、静かに、二階へ上がりかけたが、梯子段の途中で三千代 は思いあぐねて、腰をかけた。
二階へ上ることも出来なかったし、それかといって、降りて、 里子と、枕を並べて、寝る気もしない。
三千代は、足をふんばり、頬杖をついた。壁にしみつくような、夜更けの雨の音である。三千代は、この、暗い梯子段の空間だけが、自分の、隠れ 穴のような気がした。子供のように、心細くなって来ていた」(本文より抜粋)

切ない哀しさが、胸に迫る思いがするのですが、どうしてだろうか?
深さの知れない暗い海におちたとでもいいたいような虚無感。
救われようがないのだ。

こんな気持ちは女性ならではのもの、ではないだろうかと思う。
林芙美子さんは女性の哀しみや、切なさを生涯書き続けた人であるから、共感できる哀楽を私たちも感じることができるのでしょうね。

今も昔も変わらない女性の孤独の根底を味わえます。
大阪の地名、名所がたくさん出てきますので、大阪を味わうこともできます。

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