2025/10/24 13:45
こんにちは、『柚香の森』店主です。
朝晩の風がすっかり秋らしくなってきましたね。先日、家の近くを歩いていると、ふと金木犀の香りが漂ってきて、立ち止まってしまいました。
「秋、来たなあ……」
そんな瞬間って、言葉にはできないけれど、心の奥がじんわりあたたまるような、不思議な気持ちになります。
このブログでは、そんな“小さな秋”の気づきをきっかけに、「読書セラピー(ビブリオセラピー)」の視点から、日々の疲れを癒してくれる本との向き合い方を、少しだけお話しさせていただきますね。
「小さな秋」と「本の記憶」
秋になると、なぜか昔読んだ本のことを思い出すことが増えませんか?
たとえば、冷たい風が吹いたときに思い出すのは、小学校の図書室で読んだ冒険ものの児童書だったり、夕暮れの色に、昔好きだった短編集の表紙が重なって見えたり……。
そういう「記憶と読書」の結びつきには、心を癒す力があるんです。
読書セラピーでは、そうした「記憶を呼び起こす読書体験」も大切にしています。
たとえ、物語の内容を全部思い出せなくても、読んだときの空気や自分の気持ちは、案外、体に残っているものなんです。
だからこそ、秋の訪れとともに、本のページを開くと、心が少しずつ整っていくのかもしれません。
読書は「心の風通し」
私自身、ちょっと疲れているなと感じるときは、あえてストーリー性の強くない、やさしいエッセイや詩の本を手に取るようにしています。
本を読むことで、何かが変わるわけではなくても──
「あ、こういう気持ち、わたしにもあったな」
と思えるだけで、心の奥に新しい風が入ってくるような気がするのです。
読むという行為は、ひとりでいながら誰かと出会える、不思議な体験ですよね。
読書セラピーを通じて伝えたいこと
私が読書セラピーの学びを深めているのは、本が“こころのケア”にもなるからなんです。
とくに秋は、日が短くなって、気分が沈みやすくなる季節。
だからこそ、やさしく寄り添ってくれる本の存在が大切になります。
どんな本を読めばいいの?と迷ったときは、こんなふうに選んでみてください。
* 表紙の雰囲気でなんとなく「いいな」と思える本
* 読んでいた頃の自分を思い出す本
* セリフが少なく、情景描写が多い本
> 本に何を”もらおう”とするかではなく、「いまの自分がなにを求めているのか」に耳を澄ませてみると、自然と手が伸びる本があるかもしれません。
たとえば、こんな本と一緒に
ここからは、読書セラピーの視点からこの季節におすすめしたい本を、3冊だけご紹介させてくださいね。
静かに心に染み入る一冊。
家族を支え、時代を生き抜いたひとりの女性の姿を通して、「支えること」「祈ること」の意味を問いかけてくれます。
読後には、心の深いところにぽっと灯りがともるような、やさしい余韻が残ります。
三浦綾子さんの言葉には、どこか“祈り”のような力があって、そっと疲れた気持ちを包んでくれるんです。
短編集ならではの読みやすさと、人間くさい魅力が詰まった一冊。
気負わず読めるのに、ふと胸をつかまれるような瞬間があります。
秋の夕暮れに、ひとり静かにページをめくる時間には、こうした少し懐かしい昭和文学の味わいがぴったりかもしれません。
「少し笑えて、少し切ない」そんな感情の揺らぎが、心の風通しになってくれるはずです。
静謐な文章と、孤独な飛行の描写が印象的な作品。
思索的で哲学的──だけれど難しくはなく、読む人の心にやさしく語りかけてくれるような作品です。
セリフが少なく、風景や内面を描写する言葉が多いので、自分の呼吸と重ねながら読むと、深く深く入っていけます。
読書が、まるで「心の夜空をひとり飛んでいく旅」になるような、そんな読後感があります。
まとめ|秋は、心を整える季節
秋の風や光が、いつもより少しだけ繊細に感じられるようになったとき、本をそばに置いてみてください。
「何かをがんばるための読書」ではなく、
「いまの自分にそっと寄り添う読書」を──。
それが、読書セラピーの入り口です。
『柚香の森』では、そんなふうに静かに心と向き合える本を、ひとつひとつ、丁寧に選んでいます。
どうかこの秋、小さな気づきとともに、あなたの読書時間がやさしくありますように(*'▽')


