2025/12/11 14:45
こんにちは、『柚香の森』店主です。
この数週間、創作に集中していました。
太宰治賞という文学賞に応募していたんです。
12月10日、締め切りの日。
郵便局が閉まる直前まで、パソコンに向かっていました。
本当はもっと早く出すつもりだったのに、どうしても手を止められなかったのは、“希望のある終わり”を書きたかったからです。
■ 言葉を外に出したかった
応募しようと思ったきっかけは、「自分の中の言葉を、きちんと外に出してみたい」と思ったからでした。
お店で文章を書き続けるうちに、“誰かに伝える言葉”には慣れていっても、“自分の奥から出る言葉”は少し遠くなっていた気がしたんです。
だから今回は、評価や体裁を気にせず、“自分のために書く”ことに戻ろうと思いました。
書くことで、自分の中の何かが、少しずつ輪郭を取り戻していく──そんな感覚がありました。
■ 書ききった朝の静けさ
締め切りの朝、夢中でキーボードを叩いていたのですが、なぜか右手がしびれていました。
けれど、心の中はとても穏やかで、「これでいい」と思えたんです。
結果がどうであれ、書ききったという実感は、なににも代えがたいもの。
努力というより、“少しだけがんばった”時間が、こんなにも心を軽くしてくれるなんて。
まるで、長い冬のあとに光の筋が差し込むようでした。
■ 書くことも、読むことも、心を整えること
今回あらためて感じたのは、“書くこと”と“読むこと”は、どちらも心を整える行為だということ。
誰かの言葉を読むことで呼吸が整い、自分の言葉を書くことで、見えなかった痛みや希望が、少しずつ形を取り戻していく。
それは、暮らしの中の小さな習慣にも似ています。
お茶をいれる、部屋を片づける、誰かに手紙を書く──
どれも“自分を取り戻すための行為”なんですよね。
太宰治賞に応募して気づいたのは、「結果はどうであれ、自分の言葉を信じて書ききること」。
その過程こそが、私にとってのいちばんの贈り物だったように思います。
🌿 創作の合間に読んだ本たち
書く手が止まったとき、そっと読んだ本があります。
📘『愛の重さ』(アガサ・クリスティー/ハヤカワ文庫)
愛がもたらす救いと痛み、その両方を描く物語。
人を理解しようとする心が、書く力をくれました。
📘 『むかし女がいた』(大庭みな子/新潮文庫)
静けさの中にある強さ。「自分の生き方を選ぶ」という言葉が胸に残りました。
📘 『パンドラの匣』(太宰治/河北新報社)
主人公・ひばりの「生きたい」という素直な気持ちに、何度も励まされました。
弱さの中に灯る希望──それは、今回の創作にも通じるテーマでした。
どの本も、ページを閉じたあとに静かな灯りを残してくれました。
そのぬくもりが、また新しい言葉へとつながっていった気がします。
📚『柚香の森』では、心に灯りをともす文芸書を静かにそろえています。
“書く人のための読書”──そんな時間を、どうぞここから(^^


