2025/07/24 13:15
こんにちは、柚香の森です。
連日、35度を超えるような猛暑に、つい冷房の効いた部屋から出られなくなってしまいます。
こんなとき、窓の外でかすかに聞こえる蝉の声や、扇風機のリズムに耳を傾けながら、ページをめくるひとときが、私にとって小さな避暑地なんです。
けれども、ただ涼しいだけじゃもの足りない──
そんな夏にこそぴったりなのが、背筋がふっと冷たくなるような、ちょっと怖い物語なんですよね。
ちょっと怖い、だけど怖すぎない。だから楽しい
ホラーと聞くと、「苦手かも…」という方も多いと思います。
でも、今回ご紹介するのは、血が飛び散ったり、叫び声が響いたりするような、いわゆる“恐怖体験”ではなくて──
心の奥にふっと忍び寄るような、どこか懐かしさやユーモアのある“奇妙な物語たち”なんです。
それはまるで、夏の夕暮れのように。
日が落ちかけて、色がだんだんとあいまいになっていく時間帯に、「ん?」と小さく戸惑うような。
そんな読書の楽しさを、今日はお届けしたいと思います。
『人体模型の夜』中島らも|じわりとくる笑いと不穏のはざまで
中島らもさんの短編集『人体模型の夜』には、“異常”と“日常”の境目が、どこかあやふやな世界が広がっています。
ユーモラスな筆致で進むのに、ふとした一文にゾクリとしたり、登場人物の言葉が胸に刺さったり……。
読み終えたあとに残るのは、怖さというより「不思議な余韻」なんです。
じつはこの作品、私も夏の夜に読んだのですが、読了後、洗面台の鏡を見るのが少しだけ怖くなりました(笑)。
でもそれくらい、物語の中に入り込んでいた証拠なんでしょうね。
『破局』ダフネ・デュ・モーリア|ひやりとする結末の美学
続いては、イギリスの作家ダフネ・デュ・モーリアによる短編集『破局』です。
この方は、あのヒッチコックの映画『レベッカ』の原作を書いたことで知られています。
この短編集もまた、日常の裏側にある「何か」を巧みに描いていて、終わり方がどれも絶妙。
たとえば、ある物語では、なんでもない旅先の出会いが、じわじわと悪夢に変わっていきます。
読んでいる間、まるで自分がその部屋にいて、同じ空気を吸っているような感覚になるんです。
“終わりの予感”が漂う世界を、ぜひ体験してみてください。
『サキ短篇集』サキ|ブラックユーモアが涼しさを運んでくれる
最後にご紹介するのは、イギリスの短編作家・サキ。
『サキ短篇集』には、皮肉や風刺が効いたユーモアとともに、ぞわっとくるような話が詰まっています。
読み進めるうちに、「この人、怖い!」と笑ってしまいそうなキャラクターたちが次々と登場します。
ただ怖いだけじゃない。
ユーモアとスリルのバランスが、真夏の午後にちょうどいい“スパイス”になるんです。
ほんの少しの「怖さ」が、夏の楽しさを深めてくれる
暑いからといって、冷たい飲み物ばかりに頼ると、体の中がなんだか重くなってしまいますよね。
でも、“ちょっと怖い読書”なら、背筋をすっと通してくれて、心の中に風が吹くような感覚になるんです。
この夏は、クーラーの効いたお部屋で、ひんやりした物語をゆっくりと味わってみませんか?
不思議で、どこか懐かしくて、そしてちょっと怖い──そんな一冊との出会いが、今年の夏を特別なものにしてくれるかもしれません。
さいごに
クーラーの涼しい風と、少しのドキドキをおともに。
この夏の読書も、どうぞお楽しみくださいませ。
また今後も、季節に寄り添う本をご紹介してゆきますね。
どうぞ、お身体を大切に。
冷たいものの摂りすぎにはご注意くださいね(^^)/
