2025/06/19 11:13
こんにちは。
柚香の森です。
夏に向かって、少しずつ蒸し暑さが増してまいりましたね。
お変わりなくお過ごしでしょうか。
こんな季節は、涼しいお部屋で静かに本を開く時間が、何よりの癒しになるかもしれません。
お変わりなくお過ごしでしょうか。
こんな季節は、涼しいお部屋で静かに本を開く時間が、何よりの癒しになるかもしれません。
6月19日──この日が「太宰治の誕生日」であると同時に「命日」でもあること、ご存じでしたか?
文学に親しんでいる方なら、「桜桃忌(おうとうき)」という言葉を一度は耳にされたことがあるかもしれませんね。
けれどこの「桜桃忌」、ただの命日を指す言葉ではないんです。
少しだけ、お話しますね。
少しだけ、お話しますね。
太宰治は1909年6月19日、青森県の金木町に生まれました。
そして、1948年6月13日に入水自殺を図り、その遺体が発見されたのが、奇しくも誕生日と同じ6月19日だったのです。
そして、1948年6月13日に入水自殺を図り、その遺体が発見されたのが、奇しくも誕生日と同じ6月19日だったのです。
この不思議な一致が、「生」と「死」のあわいに揺れる太宰の生き様そのもののように感じられて──それゆえに、多くの人の心に深く残り続けているのかもしれません。
晩年に発表された短編『桜桃』にちなんで、この命日は「桜桃忌」と呼ばれるようになりました。
毎年6月19日には、東京都三鷹市の禅林寺で追悼の行事が開かれ、静かに彼を偲ぶ方々が集まります。
毎年6月19日には、東京都三鷹市の禅林寺で追悼の行事が開かれ、静かに彼を偲ぶ方々が集まります。
私自身も、本を通して何度も太宰治の言葉に心を救われてきたひとり。
ときに鋭く、ときにあまりにやさしく、太宰の紡ぐ言葉は、私たちの弱さや孤独にそっと寄り添ってくれるようです。
ときに鋭く、ときにあまりにやさしく、太宰の紡ぐ言葉は、私たちの弱さや孤独にそっと寄り添ってくれるようです。
たとえば──
「恥の多い生涯を送ってきました」
「生まれて、すみません」
どちらも『人間失格』の中の一節ですが、読むたびに胸がぎゅっと締めつけられるような、そんな共鳴があります。
現在、『柚香の森』では太宰治の著作は完売となってしまいましたが、それでも太宰の魂を受け継ぐような本たちが、本棚の中で静かに息づいています。今日はその中から、いくつかの一冊をご紹介させてください。
* * *
まずご紹介するのは、太宰の次女・津島佑子さんの『快楽の本棚 言葉から自由になるための読書案内』(中央公論新書)です。
この本は、津島さんの幼少期から思春期にかけての読書体験を綴った第一部と、おすすめの本を紹介しながら語る第二部から成り立っています。どちらも静かで深く、言葉へのまなざしにあふれた一冊です。
津島さんが心を通わせた古典文学や現代文学の数々。そしてその背景には、父・太宰治との文学的なつながりも、ふと感じられる瞬間があります。本を通して自分自身と向き合いたい方に、ぜひそっと開いていただきたい本です。
次にご紹介するのは、津島佑子さんの代表作『夜の光に追われて』(講談社文庫)。
この物語は、9歳の息子を失った「私」が、千年前の物語『夜の寝覚』の作者に手紙を綴っていくという構成。時を超えて交差するふたつの痛みが、静かに胸に響きます。
太宰から津島佑子へ――
太宰から津島佑子へ――
親子二代にわたって受け継がれた「言葉の灯り」
私自身、この作品を読んだとき、「悲しみって、一人きりで抱えなくていいんだ」と気づかされました。言葉にできない想いを抱えている方へ、そっと寄り添ってくれる本です。
* * *
そしてもうひとつ。太宰治賞候補作品である金井美恵子さんの『愛の生活』(新潮文庫)も、静かに心にしみてくるような一冊です。
物語は、大学教師の夫と暮らす「私」の日常。何気ない日々の中に潜む、微細な心の揺れや問いかけが、丁寧に描かれています。
「私はこの人を、どう愛しているのだろう?」──そんな問いにふと立ち止まることのある方へ。
この本は、特別な出来事のない日常の中で、言葉にならない感情に優しく光を当ててくれます。
この本は、特別な出来事のない日常の中で、言葉にならない感情に優しく光を当ててくれます。
* * *
最後にもう一冊、太宰治と同じ無頼派の作家・織田作之助の『ちくま日本文学全集 織田作之助』をご紹介します。
「夫婦善哉」や「アド・バルーン」など、大阪を舞台にした短編の数々には、人間の弱さや愚かさ、そして温もりがユーモラスに描かれています。
織田作之助の世界に触れると、「人って、本当は不器用で、でもそれが愛おしい存在なんだな」と感じさせてくれます。
心が少し疲れてしまったときに、そっと手に取りたくなるような本です。
心が少し疲れてしまったときに、そっと手に取りたくなるような本です。
* * *
6月19日、「桜桃忌」という名のもとに、太宰治の生涯に想いを馳せながら過ごす一日。
本を開くことで、その言葉が静かに息を吹き返し、私たちの胸にあたたかく灯る──そんな読書の時間を、ぜひ大切にしていただけたらと思います。
もし、気になる一冊がありましたら、どうぞ『柚香の森』の本棚をのぞいてみてくださいね。
📚太宰をもっと知りたい方はコチラからどうぞ▶三鷹市のHPです。
2025年6月19日
オンライン書店『柚香の森』店主より

