2025/08/07 15:45

こんにちは。
柚香の森の店主です。
毎日、うだるような暑さが続いていますね。
食欲がわかない日もあるかと思いますが、どうか無理せず、水分をしっかりとって、お身体をいたわりながらお過ごしくださいね。

8月は、忙しさのなかにも静けさが入り混じるような季節です。
帰省や家族との時間でにぎやかに過ごされる方もいれば、ひとりの時間をゆっくりと味わっている方もいらっしゃるでしょう。

ふと訪れる眠れない夜。理由もなく、なんとなく胸がざわついてしまう…そんなとき、私もあります。
誰かに話すでもなく、ただ静かに過ぎていく夜に、心許なくて。
そんなとき私は本を手に取ります。

今回は、そんな「こころが落ち着く時間」をそっと届けてくれるような、おすすめの4冊をご紹介いたします。
どうぞ、ご自分のペースでゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。


まずご紹介したいのは、詩人マーク・ストランドによる小さな傑作『犬の人生』。
訳者は村上春樹さんです。人生に疲れた「犬」が旅に出て、静かに世界を見つめ直す…という、不思議で哲学的な物語。
ユーモラスなのにどこか切なくて、読んだあとに不思議なやすらぎが残ります。
眠れない夜、心がざわざわするとき、「誰かになにかを訴えるのではなく、ただ一緒にいてくれる本」を求める方にぴったりです。


心がざわつく夜に、あなたに寄り添う優しい物語――久生十蘭『あなたも私も』は、不安や孤独を抱くとき、そっと背中を押してくれる一冊です。
突然の遺産不安に巻き込まれるサトの姿に、誰もが自分を重ねるはず。「大丈夫、あなたは一人じゃない」と静かに語りかけられるような温もりがあります。
不安や孤独な気持ちで迷った方に、「今のままでもきっと大丈夫」と穏やかに語りかけてくれます。心が疲れた夜、ぜひ手に取ってみてください。


眠れない夜にこそ読んでいただきたいのが、ボルヘスの『夢の本』です。
古今東西の「夢」にまつわるエピソードを、詩人のように、美しく綴っているんです。
頭の中が忙しいとき、心配ごとで眠れない夜に、ぜひこの本を開いてみてください。 「人間は昔から、夢に導かれてきたんだ」と思うと、少し気持ちがやわらぎますよ。
 現実を忘れて夢の世界へとふわりと漂うような読書体験ができます。


最後は、アンドレアス・セシェによる『囀る魚』。
 一見ファンタジックな世界ですが、実はとても深く静かな哲学が流れている作品です。
 魚が「さえずる」って、どういうこと?と不思議に思いながら読み始めると、 やがて「言葉とはなにか」「声にならない思いとはなにか」に自然と向き合わされます。
孤独や不安を感じるとき、なにかに「名づけたい」と思うことはありませんか?
 この本は、そんな心の動きを受け止めてくれるような、優しい対話のような存在です。
「不安を和らげる本ってありますか?」「眠れない夜、どんな本を読んでいますか?」── そんなご質問をよくいただきます。
 私自身、かつて病気でつらい夜を過ごしていた頃、本だけが心の支えでした。
 だからこそ、「本には、心の深いところにそっと手を伸ばす力がある」と信じています。

この夏、もしも静かな夜に、気持ちが揺らぐようなことがあったら。
どうか無理せず、やわらかい灯りの下で本を開いてみてください。

あなたの心が、少しでもやわらぎますように──。
店主より