2023/04/12 09:44

 地元の神社の月市で広げた本を前にして、私は手持ちの本を読んでいた。

オンライン書店をオープンする前の冷たい一月。

 文庫本の上下巻を迷わず買ってくださった初老の男性が、

「親が認知症になって本の処分に困っています。買い取ってもらえますか?」

「当店に合うものであれば、ですが。文芸書があれば買い取らせていただきますよ」

と私はこたえました。

 

 月日が経ち、連絡を頂いたのが先日のこと。

男性は紙袋を下げて神社まできてくださり、その場で査定しました。

当店好みの書籍はほんの10冊程度になり、申し訳無かったのですが、

「残りの本を月の市で売ってください」と言われました。

 

 今月13日の十三市にはその本達を引っ提げて行きます。

消毒し、消臭して、綺麗になった書籍を見て我ながら誇らしく思えました。

 人から人へ渡ってゆく書籍。

次はどんな人と巡り合うのでしょうか。

 

 本は無言ですが、読んでみると何かを語りかけます。

作者の想い、その本を買った人の想いが理解できるのです。

もちろん前の主の顔、姿なんかはわからないけれど、

『想い』です。

その本を見つけて手に取ったときの感情、思い付き、直感です。

「読みたい」……

そう思って手に取った本を、じっくり味わってくださる方に出会えますように!