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きことわ（新潮文庫）　朝吹真理子

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≪7版≫2014/5/30発行

第144回芥川賞受賞作品（2011年）

記憶と夢がほどけ合う、淡くて繊細な“再会”の物語です。

『きことわ』（朝吹真理子・新潮文庫）は、25年ぶりに再会した二人の女性が、葉山の別荘地で過ごす静かな時間を描いた小説。

かつて特別な夏を共有した彼女たちが、思い出や夢のなかで、過去と現在の境界を曖昧にしながら、自分自身の記憶と向き合っていきます。

言葉の一つひとつがまるで風の音のように繊細で、読んでいると心の深いところに、そっと触れられるような気がしました。とくに印象に残ったのは、何が事実だったのかは重要ではなく、「あのときどう感じたか」が大切に描かれていたこと──その感覚に、私はとても救われました。

過去を懐かしく思い返したいとき、大切な誰かをふと想いたくなったときに。静かな余韻をまとったこの一冊が、きっとあなたの心にも寄り添ってくれますように。