2026/08/17 13:46

こんにちは。

柚香の森に、二つの『夜と霧』がそろいました。
ひとつは、現在広く読まれているヴィクトール・E・フランクル『夜と霧 新版』池田香代子訳。
もうひとつは、霜山徳爾訳『フランクル著作集1 夜と霧』。函と帯をまとった、古いみすず書房版です。

同じ『夜と霧』ですが、この二冊は単に「新しい翻訳と古い翻訳」というだけではありません。
底本や編集、収録されている資料にも違いがあります。

今回は、どちらを選べばよいか迷っている方へ、二つの『夜と霧』を簡単にご紹介します。

初めて読むなら、池田香代子訳の「新版」


白い装丁で知られる『夜と霧 新版』は、池田香代子訳、みすず書房刊。
2002年に刊行された新訳・新編集版で、フランクル自身が手を加えた1977年の改訂版をもとにしています。
旧版に収録されていた長い解説や写真資料を省き、フランクルの文章そのものを中心に読める構成です。
今回入荷した一冊は、2020年9月1日第38刷。帯付きで、本文への書き込み・線引きはありません。
「これから初めて『夜と霧』を読んでみたい」
「まずはフランクルの文章に向き合いたい」
そんな方には、こちらの新版から入るのが自然だと思います。

旧訳と資料も含めて味わう、霜山徳爾訳


もう一冊は、霜山徳爾訳による『フランクル著作集1 夜と霧』です。
霜山訳は、戦後の日本で長く読み継がれてきた『夜と霧』の旧訳。
この版の大きな特徴は、フランクルの本文だけではありません。
日本の読者に強制収容所の背景を伝えるために加えられた長い解説と、多数の写真・図版、地図を収録しています。
そのため、作品そのものを読むと同時に、
「『夜と霧』が戦後の日本でどのように紹介され、読まれてきたのか」
という歴史にも触れられる一冊です。

柚香の森にあるものは、みすず書房「フランクル著作集」第1巻。函・帯付きで、古書としての佇まいも楽しめます。
旧い翻訳を味わいたい方、写真や解説も含めて読みたい方、出版史や翻訳の違いに関心のある方には、こちらをおすすめします。

二冊の違いを簡単に


■池田香代子訳『夜と霧 新版』
・2002年刊の新訳・新編集
・1977年の改訂版をもとに翻訳
・フランクルの本文を中心に読む構成
・初めて『夜と霧』を読む方にも手に取りやすい

■霜山徳爾訳『フランクル著作集1 夜と霧』
・戦後の日本で長く読まれてきた旧訳
・日本語版独自の解説を収録
・写真・図版、地図を収録
・旧訳、出版史、資料性まで味わいたい方に
どちらか一方が優れている、ということではありません。
同じ作品でありながら、それぞれに違った役割と魅力があります。

どちらを選ぶ?


初めて『夜と霧』を読むなら、まずは池田香代子訳の新版。
すでに新版を読んだことがあり、もう少し深く作品の背景を知りたい方には、霜山徳爾訳も興味深い一冊です。
そして、本そのものや翻訳の違いが好きな方なら、二冊を並べて読むのもおすすめです。
同じ場面がどのような言葉で訳されているのか。
何が残され、何が省かれているのか。
一冊だけでは気づかなかったことが、二冊を並べることで見えてくることがあります。

古本屋の棚で出会う、二つの版


古本屋では、ときどき同じ作品の異なる版が同じ棚に並びます。
新しい版には、新しい版ならではの読みやすさがあり、古い版には、その本が歩いてきた時間や当時の編集を知る愉しみがあります。

今回の二つの『夜と霧』も、そんな組み合わせです。

人間の尊厳とは何か。
極限のなかで、人は何を失い、何を残すことができるのか。
簡単な答えをもらうためではなく、静かに考えるための本として。
ご自身に合う一冊を選んでいただければと思います。

今回ご紹介した二冊


ヴィクトール・E・フランクル著
池田香代子訳
みすず書房
帯付き・単行本

ヴィクトール・E・フランクル著
霜山徳爾訳
みすず書房
函・帯付き古書

それぞれの商品ページは、このブログ記事内の商品リンクからご覧いただけます。
古本のため、在庫はいずれも一冊限りです。

より詳しい版の違いや、収録資料、刊行の背景については、柚香の森「森のたより」でも詳しくご紹介しています。

森のたより

『夜と霧』はどちらを選ぶ? 池田香代子訳・新版と霜山徳爾訳を比べてみる

二つの版をじっくり比べたい方は、あわせてご覧ください(^^)